消化器外科医のための抄読会のネタブログ

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肝切除を施行した大腸癌肝転移症例において、原発巣部位は術前化学療法の治療効果と予後を予測する。

最近ははてしなくやる気がなくて、すぐにお酒が飲みたくなります。しかし、お酒を飲みすぎると翌日胸焼けするため、さらにやる気がなくなるという法則です。2週間ぐらい家に閉じこもってぼーっとしていたい今日この頃です。やらねばならない大きな仕事があるのに、まだ手を付けきれてない時にだいたいこういう気分になります。

まだ時間的余裕は少しあるけど、もうそろそろ始めないとやばいなあ→明日からはじめても頑張ればまだ間に合うな→かなり頑張ればぎりぎり間に合うんじゃない?→やべーもうだめだーの連続人生です。

今回もAnnals of Surgeryからの論文です。

 

Embryonic Origin of Primary Colon Cancer Predicts Pathologic Response and Survival in Patients Undergoing Resection for Colon Cancer Liver Metastases.

Ann Surg. 2016 Dec 19.

 

Introduction

  • 大腸癌は遺伝学的や分子生物学的な研究の結果、一つの疾患ではないとみなされている。
  • 中腸、後腸由来の大腸癌はそれぞれ異なる発がん経路をたどってきていることが報告されている
  • 中腸由来のがんは二倍体で病理学的にMucinousであり、MSI-High、CIMP-High、BRAF変異を取りやすい一方、後腸由来のがんは異数体で染色体不安定性をの表現型を取りやすい。
  • 最近では原発巣部位の由来により予後に差がつく報告が多くなされている。
  • 本研究は化学療法後に肝切除を施行した大腸癌肝転移症例における、原発巣部位(胎生期由来別)の①予後予測効果②術前化学療法の病理学的治療効果との関連性をRAS status別に解析する。

 

Methods

  • 1990年から2015年までにMD andersonで大腸癌肝転移に対し肝切除を施行した2195例を対象とした。
  • RFA併用症例、直腸癌、横行結腸癌、術前化学療法非施行症例、病理学的治療効果の未評価症例、術前後の抗EGFR抗体薬投与症例、RAS変異status未検査症例は対象外とし、最終的には725例が解析された。
  • 術前化学療法未施行の症例252人がvalidation setとして対象となった。
  • 病理学的治療効果の定義:majorは残存腫瘍組織が0-49%、minorはそれ以上

 

Results

  • 33%が中腸由来、67%が後腸由来であった。
  • 患者背景では後腸由来のがんは術前化学療法の病理学的治療効果が高い(P=0.012)以外は2群間に差は認めなかった。
  • 病理学的治療効果がminorである予測因子を解析したところ、中腸由来、bevacizumab非併用、RAS変異型が挙げられた。3因子とも持つ症例はminor率が53%で、3因子とも持たない症例はminor率が23%であった(p=0.0001)。
  • 肝切除後の予後は中腸由来の癌が有意に短いRFSとOSであった。3年RFS 15%vs. 27%、3年OS 46%vs. 63%。多変量解析でも中腸由来はRFS、OSにおける独立した予後因子であった。RAS変異型も両方において独立した予後因子であった。
  • RAS変異別のサブグループ解析において、野生型、変異型それぞれ中腸由来が予後(RFS, OS)不良であった。
  • Validation setにおいても、中腸由来の癌がRFS、OS共に予後不良であった。多変量解析でも中腸由来は独立した予後規定因子であり、RAS変異型別の解析でもStudy setと同様の結果であった。

 

Discussion

  • 術前化学療法の治療効果と肝切除後の生存成績が原発巣の部位とRAS変異型で予測できることが明らかになった。
  • また、RAS野生型で後腸由来の癌は長期予後が見込め、RAS変異型で中腸由来の癌は予後不良であった。
  • 以前の報告では、中腸由来の癌の予後が不良なのは、BRAF変異例やCIMP例、ERCC1発現例の割合が高いからと言われてきた。しかし、肝切除対象症例ではBRAF変異例やCIMP症例の割合が低く、背景にある予後因子としては考えにくい。今後のさらなる研究が必要である。

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