消化器外科医のための抄読会のネタブログ

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慢性炎症/サルコペニアと大腸癌の生存成績との関連性:C SCANS Study

Association of Systemic Inflammation and Sarcopenia With Survival in Nonmetastatic Colorectal Cancer Results From the C SCANS Study

JAMA Oncol. 2017 Dec 1;3(12):e172319. 

背景

慢性炎症とサルコペニアは容易に評価でき、多くの癌で死亡率を予測でき、改善させることも可能である。慢性炎症とサルコペニアの組み合わせが、予後不良な早期大腸癌患者を同定できるかもしれない。今回の研究では診断前慢性炎症所見と診断時サルコペニアとの関連を調べ、大腸癌の生存を予測するためにこれらが相互作用するか、年齢、民族、性別、BMI、進行度、癌局在を調整して判定することを目的とした。

 

方法
2006年から2011年にStage I-IIIの大腸癌と診断された2470人のKaiser Permanente(アメリカの健康保険会社) 加入患者を前向きに検証した。主要な炎症のマーカーは好中球/リンパ球比(NLR)であった。NLR値は大腸癌診断から24か月前のものを平均した(平均回数3回、平均診断からの時期7か月)。基準のグループは炎症が低いかないと思われるNLRが3未満とした。CTスキャンを用いて骨格筋指標を計算した(第3腰椎部の筋肉量を身長の2乗で割った値)。サルコペニアは正常とやや肥満の男性は骨格筋指標が53cm2/m2未満、女性は38cm2/m2未満とし、肥満の男性は54cm2/m2未満、女性は47cm2/m2未満とした。主要評価項目は死亡とした(全死亡と大腸癌関連死)。

 

結果

2470人の中で、1219人(49%)が女性で平均年齢が63才(SD12)であった。NLR値が3以上が46%で、サルコペニアが44%とよく認められた。6年以上の観察により656人が死亡し、その中で大腸癌関連が357人であった。NLRの上昇は値に依存してサルコペニアと関連があった(NLR < 3, odds ratio, 1.35; 95%CI, 1.10-1.67 for NLR 3 to <5; 1.47; 95%CI, 1.16-1.85 for NLR < 5; P for trend < .001).NLR値が3以上またはサルコペニアであることは全生存および大腸癌関連死の独立した予測因子であった。サルコペニア状態とNLR3以上の両方を持つ患者は、持たない患者と比較して死亡のリスクが2倍であった。

 

結語
診断前炎症は診断時のサルコペニアと関連していた。サルコペニアと炎症の組み合わせは死亡のリスクを倍増した。このことはこれらの普段収集するバイオマーカーを予後診断にできることを示唆している。どのようにホストの炎症免疫反応が骨格筋の変化に影響しているのかを理解することで、がん治療を改善しうる新たな治療手段が開けてくるかもしれない。