腹部手術の閉腹創における予防的Negative pressure dressing
毎年この季節になると時間が経つのは早いなーと思います。クリスマスまでの街が浮ついた感じが自分は好きなのですが、それが終わると一気に日本的な感じで、年末の当直も相まってあまり好きになれないのです。今回は忘年会が忙しいので、少し簡単な論文を読んでみました。
Prophylactic Negative Pressure Dressing Use in Closed Laparotomy Wounds Following Abdominal Operations
Ann Surg. 2016 Dec 6.
Introduction
- 手術部位感染は患者や医療者側にとっても負担のかかるものであり、現在でも懸念すべき合併症である。
- Negative pressure dressing(NPD)はSSIの発生率を有意に低下させ、Metaanalysisでもその効果が示されている。
- 原理としては、NPDによる低酸素状態が局所および全身の炎症性サイトカイン上昇を引き起こし、血管新生や細胞外基質の沈着を刺激し、肉芽形成を引き起こす。
- 腹部手術のSSI発生率は10-35%と報告されている。
- NPDが腹部手術のSSI発生を低下させると仮定し、本研究を行った。
Methods
- Open-label(非盲検)のrandomized試験を施行した。
- 予定手術と緊急手術で開腹手術予定の患者を対象とした。
- 除外基準
- class IVの汚染創 (http://www.woundcarecenters.org/article/wound-types/surgical-wounds)
- BMI40以上
- ASA garade4以上
- 抗生剤投与や清潔手技などは通常通り。
- NPD群とコントロール群(通常ケア群)に1:1で割り付けし、NPD群はPICO dressingというデバイスを用いた(PICO* 創傷治療システム | Smith & Nephew - Japan)。
- DressingはSSIがなければ4日で除去し、SSIはガイドラインに従って診断された。
- Primary outcomeは術後30日でのSSI発生率。
- SSI発生率をコントロール群で35%と見積もり、NPDが発生率を10%減少すると仮定して、必要症例数は各群25例とした。
Results
- 患者背景に差は認めなかった。
- 30日後のSSI発生率はNPD群で8.3%(2/24)、コントロール群で32.0%(8/25)であった(片側P=0.043、両側P=0.074)
- 術後平均在院日数はNPD群で6.1日、コントロール群で14.7日(P=0.019)で、有意にNPD群が短かった。
- SSI発生の予測因子としてはDressingの違いのみが単変量解析で同定された。
Discussion
- 予防的なNPD療法は開腹手術創のSSI発生を抑制し、在院期間も他院宿できた。
- PICOは浸出液を200mlまで吸引できる。
- すべてのタイプの創で効果があるのかはわからないが、汚染創でより効果がありそうだ。
Comment
25例づつのRCTです。単施設で可能なRCTであり、期間もそこまでかかっていないと思われます。このような研究のアイデアはほかにもありそうに思えます。腹腔鏡手術全盛の日本だとSSI発生率はもっと少ないと思います。