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消化器外科医のための抄読会のネタブログ

私の夢は毎週の抄読会がなくなることです。

StageII/III結腸癌における腹腔鏡下 vs 開腹D3郭清術のランダム化第3相試験:JCOG0404

今回は、日本のPhaseIII試験の論文を読んでみました。最近は製薬会社の協力を得ないと臨床試験も予算的に難しくなってきており、必然的に化学療法の臨床試験が多くなってしまいます。医師主導の手術のRCTはあまり行われないため、本試験は貴重な結果だと思います。

 

 

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Survival outcomes following laparoscopic versus open D3 dissection for stage II or III colon cancer (JCOG0404): a phase 3, randomised controlled trial

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2468125316302072

 

Introduction

  • 欧米ではすでに結腸癌に対する腹腔鏡手術は有効であるとみなされている。
  • 短期成績では腹腔鏡手術の方が術後疼痛が少ない、イレウスが少ない、創感染が少ない、回復が早いなどのメリットが言われている。
  • さらに長期成績もいくつかのランダム化試験で、腹腔鏡と開腹手術で大差ないことが示されている。
  • しかし、これらの試験はTotal mesocolic excisionという手術手技が確立する前のもので、pStage0-Iが含まれていたり、直腸癌が含まれていたり、リンパ節郭清範囲が特定されていない欠点がある。
  • JCOG0404はD3郭清における腹腔鏡手術の開腹手術に対するOSの非劣勢を検証した試験で、StageII/III大腸癌に限定して行われた。

Methods

  • 多施設共同ランダム化第III相試験
  • C-Rsまでの大腸癌で、Tは除外
  • 腫瘍部位と施設で層別化し、非盲検
  • StageIII症例は5FUベースの術後化学療法を施行
  • 主要評価項目:OS
  • 副次評価項目:RFS、短期成績(別論文で発表済み)
  • サンプルサイズ:当初はイベント数254例、5年OSを75%と見積もり、818例と設定していた。しかし、試験開始後に予想よりイベント数が少なかったため、1050例に増加させた(5yrOSを82%と見積もった)。
  • αエラー(片側):5% 検出力:0.8
  • non-inferior margin 1.366
  • 手術時の写真やビデオを中央判定することで、手術のクオリティーを担保した。

Results

  • ITT症例は開腹群528例、腹腔鏡群529例であった。
  • 2群間の患者背景に差はなかった。
  • 腹腔鏡手術から開腹手術への移行は5%であった。
  • ITT症例における5年OSは開腹群で90.4%、腹腔鏡群で91.8%であった。
  • 開腹に対する腹腔鏡群のOSのHRは1.06 (95%CI=0.79-1.41,P non-inferior=0.073)で腹腔鏡手術の開腹手術に対する非劣勢は証明されなかった。
  • OSのサブグループ解析では、cT4、cN2、BMI25以上の症例が腹腔鏡で予後不良の傾向にあった。
  • 5年RFSは開腹群で80%、腹腔鏡群で79%であった (HR1.07, 95%CI=0.82-1.38)。
  • 開腹群 vs 腹腔鏡群の再発臓器別の頻度は肝転移:44% vs 40%、肺転移:35% vs 33%、腹膜播種:11% vs16%、リンパ節:13% vs 15%。

Discussion

  • 今回のstudyでは腹腔鏡手術の開腹手術に対する非劣勢は証明できなかった。
  • しかし、これはOSが予想よりよかったことに起因しており、両群のOSは似通っているため、腹腔鏡下D3手術はStageII-III結腸癌に許容されうると考えられる。
  • もし、5年OSを90%と見積もってサンプルサイズを計算しなおすと、2500例以上さらに必要になるため、実現不可能である。
  • 再発後の治療についてはデータを集積しておらず、2群間で異なっていた可能性がある。
  • 他のこれまでの第3相試験と異なる点はStageII/IIIに限定したこと、D3郭清という独自の郭清法を行ったこと、術後化学療法をプロトコールとして行っていること、手術のクオリティーを担保していることである。
  • Rs、T4、N2、肥満症例で腹腔鏡の予後が悪かったが、特にT4症例は腹腔鏡の適応に慎重になるべきである。
  • この試験の結果からは、開腹手術が標準で、腹腔鏡はオプションで許容されうる。

 

コメント

手術のクオリティーを担保したのが日本的でよかったのではないでしょうか。臨床試験をどう計画するかは難しいです。StageIIIのみに限定するか、RFSを主要評価項目にすればよかったのでしょうか? 

進行大腸癌に対する抗IL-1a抗体薬療法: 第3相ランダム化試験

切除不能大腸癌

いやいや少しお休みしてしまいました。今回は進行大腸癌症例に対する症状緩和を目的とした治療の論文です。MABp1は進行がん患者の症状緩和を改善するとともに、抗腫瘍効果も期待されるとPhaseI試験の結果から予想されていました。今回の論文はPhaseIII試験の結果となります。勢い込んで読んでみたものの、内容が複雑で時間がかかってしまいました。

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MABp1 as a novel antibody treatment for advanced colorectal cancer: a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 study

Lancet Oncol. 2017 Jan 13

 

Introduction

  • インターロイキン1αは癌に対する局所的、全身的な影響を持ち、有望な癌治療のターゲットであり、癌細胞や浸潤リンパ球により発現されることで、癌の微小環境における炎症性シグナルの重要な要素でもある。
  • インターロイキン1αやそれにより誘導されるIL-6などのサイトカインは発熱、倦怠感、食欲不振や急性期の蛋白発現を引き起こす。また、糖新生や除脂肪体重の減少のみならず、骨格筋の減少も引き起こす。
  • MABp1はインターロイキン1αを特異的に標的とし、中和するモノクローナル抗体免疫療法剤である。
  • MABp1は単剤治療で32%の進行がん患者で病勢コントロールされ、癌特有の症状である倦怠感や痛み、食欲不振を改善する。特に体重増加が特筆すべき所見であった。
  • このような種類の症状改善は、臨床的評価項目としての使用できる評価法かもしれない。

 

Methods

  • このPhaseIIIプラセボ対象ランダム化試験はEUとロシアの42の外来化学療法施設で施行された。
  • 対象症例配下の通り
    • オキサリプラチンとイリノテカンが不応。
    • EOCG-PSが1または2。
    • 過去6か月間で20%の体重減少あり、または血中IL-6濃度が10pg/ml以上。
    • 食欲不振、倦怠感、痛み、情緒機能や社会的な役割の減少(EORTC QLQ-C30)がすくなくとも1つ以上認められる。
    • 臓器機能が保たれている。
  • MABp1またはプラセボ療法に2:1で割り付けられた。
  • 主要評価項目はMABp1(またはプラセボ)を投与された患者における、ベースラインからの投与8週後の状態を評価(図参照:体重減少なく、かつEORTC QLQ-C30で2つ以上の症状が増悪ない場合を主要評価項目に達したと判断)

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  • MABp1は7.5mg/kgを2週ごとに8週間投与。プラセボも同様。
  • プロトコール期間は8週で、その後は両群ともにMABp1が使用可能。

 

Results

  • 333例が割り付けられ、1回以上治療を受けた症例がMABp1群で207例、プラセボ群で102例であった。2群間の患者背景に差はなかった。
  • 主要評価項目に到達した症例はMABp1群で68例(33%)、プラセボ群で19例(19%)であった (relative risk 1.76, 95% CI 1.12–2.77, p=0.0045)。
  • 体重減少、疼痛、倦怠感、食欲不振の各項目を個別に2群間で比較すると有意差は認めなかった。
  • EORTC QLQ-C30スコアも2群間で差がなかった。
  • 8週後におけるIL-6値と血小板値の増加の程度はプラセボ群が有意に大きかった。
  • 8週後の時点でSDであったのは、MABp1群で35例(17%)、プラセボ群で12例(12%)であった(HR=1.26, 95%CI=0.93-1.73, P=0.14)。CR/PR症例は両群ともに認めなかった。
  • OSはMABp1群で6.1か月、プラセボ群でプロトコール治療終了後もMABp1の投与を受けなかった症例は2.4か月であった(log-rank p-0.0002)。
  • 全症例において、主要評価項目に達した症例と達しなかった症例を比較すると、主要評価項目に達した症例のOSは11.5か月、達しなかった症例のOSは4.2か月で会った(HR=0.31, 95%CI=0.20-0.48, p<0.0001)
  • -rade3/4の有害事象で最も発生率が高かったものは貧血(MABp1群 vs プラセボ群=4% vs 5%)、ALP上昇(4% vs 2%)、倦怠感(3% vs 7%)、AST上昇(3% vs 2%)であった。
  • 治療8週後にはMABp1群で8%、プラセボ群で11%が死亡したが、治療関連死亡は認めなかった。
  • 重篤な有害事象の発生は両群間で差は認めなかった(23% vs 32%, p=0·07)。

Conclusions

  • 今回使用した主要評価項目は臨床上有用な結果を示した。MABp1は進行大腸癌に対する新しい標準的マネージメントになるかもしれない。

 

とにかく、このような緩和医療の臨床試験はいろんな評価項目があって、読むのが大変でした。間違って理解しているところがあるかもしれません。PROまで加わってくるともう何が何やらわからなくて、まだまだファジーな分野だなと思いました。

今回の主要評価項目に関しては到達症例と非到達症例で予後にかなり差が認められました。8週間は必要ですが、1st-lineの治療においても予後予測因子になり得るのではないかと思いました。

MABp1は抗腫瘍効果もあり、副作用もほとんどないので、他の薬剤との併用も興味があるところです。

Methodsの箇所はCONSORT に沿って詳しく書かれているなと思いました。

 

 

肝切除を施行した大腸癌肝転移症例において、原発巣部位は術前化学療法の治療効果と予後を予測する。

最近ははてしなくやる気がなくて、すぐにお酒が飲みたくなります。しかし、お酒を飲みすぎると翌日胸焼けするため、さらにやる気がなくなるという法則です。2週間ぐらい家に閉じこもってぼーっとしていたい今日この頃です。やらねばならない大きな仕事があるのに、まだ手を付けきれてない時にだいたいこういう気分になります。

まだ時間的余裕は少しあるけど、もうそろそろ始めないとやばいなあ→明日からはじめても頑張ればまだ間に合うな→かなり頑張ればぎりぎり間に合うんじゃない?→やべーもうだめだーの連続人生です。

今回もAnnals of Surgeryからの論文です。

 

Embryonic Origin of Primary Colon Cancer Predicts Pathologic Response and Survival in Patients Undergoing Resection for Colon Cancer Liver Metastases.

Ann Surg. 2016 Dec 19.

 

Introduction

  • 大腸癌は遺伝学的や分子生物学的な研究の結果、一つの疾患ではないとみなされている。
  • 中腸、後腸由来の大腸癌はそれぞれ異なる発がん経路をたどってきていることが報告されている
  • 中腸由来のがんは二倍体で病理学的にMucinousであり、MSI-High、CIMP-High、BRAF変異を取りやすい一方、後腸由来のがんは異数体で染色体不安定性をの表現型を取りやすい。
  • 最近では原発巣部位の由来により予後に差がつく報告が多くなされている。
  • 本研究は化学療法後に肝切除を施行した大腸癌肝転移症例における、原発巣部位(胎生期由来別)の①予後予測効果②術前化学療法の病理学的治療効果との関連性をRAS status別に解析する。

 

Methods

  • 1990年から2015年までにMD andersonで大腸癌肝転移に対し肝切除を施行した2195例を対象とした。
  • RFA併用症例、直腸癌、横行結腸癌、術前化学療法非施行症例、病理学的治療効果の未評価症例、術前後の抗EGFR抗体薬投与症例、RAS変異status未検査症例は対象外とし、最終的には725例が解析された。
  • 術前化学療法未施行の症例252人がvalidation setとして対象となった。
  • 病理学的治療効果の定義:majorは残存腫瘍組織が0-49%、minorはそれ以上

 

Results

  • 33%が中腸由来、67%が後腸由来であった。
  • 患者背景では後腸由来のがんは術前化学療法の病理学的治療効果が高い(P=0.012)以外は2群間に差は認めなかった。
  • 病理学的治療効果がminorである予測因子を解析したところ、中腸由来、bevacizumab非併用、RAS変異型が挙げられた。3因子とも持つ症例はminor率が53%で、3因子とも持たない症例はminor率が23%であった(p=0.0001)。
  • 肝切除後の予後は中腸由来の癌が有意に短いRFSとOSであった。3年RFS 15%vs. 27%、3年OS 46%vs. 63%。多変量解析でも中腸由来はRFS、OSにおける独立した予後因子であった。RAS変異型も両方において独立した予後因子であった。
  • RAS変異別のサブグループ解析において、野生型、変異型それぞれ中腸由来が予後(RFS, OS)不良であった。
  • Validation setにおいても、中腸由来の癌がRFS、OS共に予後不良であった。多変量解析でも中腸由来は独立した予後規定因子であり、RAS変異型別の解析でもStudy setと同様の結果であった。

 

Discussion

  • 術前化学療法の治療効果と肝切除後の生存成績が原発巣の部位とRAS変異型で予測できることが明らかになった。
  • また、RAS野生型で後腸由来の癌は長期予後が見込め、RAS変異型で中腸由来の癌は予後不良であった。
  • 以前の報告では、中腸由来の癌の予後が不良なのは、BRAF変異例やCIMP例、ERCC1発現例の割合が高いからと言われてきた。しかし、肝切除対象症例ではBRAF変異例やCIMP症例の割合が低く、背景にある予後因子としては考えにくい。今後のさらなる研究が必要である。

コメント

コメントは特にありません。

 

肝外転移を伴う大腸癌肝転移に対する切除術

切除不能大腸癌

あけましておめでとうございます。年が明けて普段と変わらない日常がまた始まりました。年末年始はいろいろと忙しかったのですが、何とか論文を読むことができました。今年もできるだけ続けるのが目標です。

前回からの続きの2報目です。大腸癌に関しては切除術を行わないと根治は望めないと思います。肝限局転移症例には根治が行われることも多いですが、肝外転移を伴う症例には根治術は躊躇されることが多いです。今回は肝外転移を伴う肝転移症例に対する切除術の報告です。

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Colorectal Cancer Liver Metastases and Concurrent Extrahepatic Disease Treated With Resection.

Ann Surg. 2017 Jan;265(1):158-165.

 

Introduction

  • かつて肝外転移を伴う大腸癌肝転移に対し、肝切除は禁忌であった。
  • しかし最近では、限局した肝外転移を伴う肝転移症例に対して、同時切除を行うことで、中期予後が得られることがわかってきた。
  • たいていの症例はその後再発し、中でも術後短期間で再発をきたし、手術以外の治療が望ましかったと思われる症例も存在する。
  • 肝外転移を切除した症例に対するデータはあまりなく、どのような症例に行うべきなのかもよくわかっていない。
  • さらに外科医は大腸癌肝転移を切除する際に、予期せぬ肝外病変(リンパ節転移や腹膜播種)などを術中に発見し、このまま手術を進めるべきなのか悩む機会が時々見受けられる。
  • 我々は以前、肝外転移を伴う大腸癌肝転移症例の切除成績を報告しているが、今回updateされた成績を報告する。


Methods

  • Memorial Sloan Kettering Cancer Centerにおいて1992年から2012年までの期間に肝転移切除時に判明していた肝外転移を同時期(6ヶ月以内)に切除した症例を対象とした。
  • 肝転移が不完全切除(R2)であった症例は除外された。

 

Results

  • 2693例の肝切除症例のうち、219例が今回の解析対象となった。80%の症例で、肝外転移は肝転移と同時に切除された。
  • フォローアップ期間の中央値は31.2ヶ月であった。OSの中央値は34.4ヶ月で3、5、10年生存率はそれぞれ49%、28%、10%であった。
  • RFS中央値は8.3ヶ月でで3、5、10年無再発生存率はそれぞれ9%、5%、3%であった。
  • フォローアップできた205人のうち、185人(90.5%)が再発した。肝内再発が57.6%(再発までの期間8.1M)、多臓器再発84.4%(8.0M)。再発した症例の22%が再度手術施行。
  • 根治率は6.6%であった。10年以上の無再発症例は5例あり、全例が肝転移単発+肝外転移が肉眼的完全切除+術後補助療法を受けていた。
  • 肝外転移別の予後は門脈・後腹膜領域LN転移、多臓器が予後不良グループで、それ以外は予後良好グループであった(5年生存率:13.2% vs 36.5%, MST: 25.2M vs 45.7M)。
  •  OSの予測因子として、3㎝より大きな肝転移巣、肝転移個数6個以上、門脈・後腹膜領域LN転移/多臓器転移、術前化学療法中の増悪が多変量解析で挙げられた。そのうち前者3因子でRisk score modelを作成したところ、因子の数が増えるほど予後不良であった。

 

Discussion

  • 本研究は肝転移並びに肝外転移に対する切除術の研究として、最大規模であり、かつこれほど長いフォローアップ期間は初めての報告である。
  • 肝外転移巣の不完全切除症例は予後不良であり、完全切除ができなければ切除は禁忌である。
  • また、本研究で作成したRisk scoreモデルで3因子陽性の症例は極めて予後不良であり、切除術の適応とすべきでない。特に腹膜播種(carcinomatosa)症例や広範な後腹膜リンパ管症症例や術前化学療法増悪症例は対象から外すべきである。
  • しかし、術前化学療法に関しては全例が術前化学療法を受けているわけでなく、奏効度の評価も一定ではないため結論として協調しない。別の研究が必要となる。
  • レトロスペクティブ研究であるため、手術を施行されなかった症例がどのくらい存在したのか不明であり、生存成績には大きなセレクションバイアスが存在する。しかし、肝外転移巣が不完全に終わった症例は予後がより不良であったことを考慮すると、肝外転移巣に対する切除術は意義があると示唆される。
  • 限局した肝外転移を伴う肝転移症例に対する切除術は長期生存をもたらすことが可能である。

 

コメント

少し飛ばし読みした所があります。

やはり多臓器転移症例は今の治療法では根治にはほど遠いです(6.6%)。しかし、根治率は0%ではありませんし、生存期間は延長が期待できるので、切除術を念頭に置いた治療戦略が必要だと思いました。

今回、根治を目指す戦略ということで、最強の化学療法FOLFOXIRI+Bmabの治療成績と拡大手術に関する報告をそれぞれ読んでみました。しかし、これら2報の結果からも、根治までもっていくには相当厳しく、今までにない治療法の開発や発想が必要だと感じました。進行大腸癌がどうしても根治に持っていけない場合は、大腸カメラを対策型検診として始めないと、このまま大腸癌による死亡者数は増え続けるように感じています。

肝限局転移を伴う切除不能大腸癌におけるFOLFOXIRI+Bmabの効果

切除不能大腸癌

もうクリスマスも終わって、あとは仕事納めだけです。ブログを初めて2か月近く経過しましたが、通常業務とのバランスが難しい今日この頃です。今年1年いろいろなことがありましたが、ほとんど忘れてしまいました。つらいことは忘れたほうがいいですもんね。

切除不能大腸癌の治療成績はOSが30か月を越して、以前の成績と比較するとかなり改善してきているといわれています。しかし、自分としては、切除不能大腸癌でも根治を目指す治療を行いたい。自分だったらきつい治療でもいいから、可能性は少なくてもいいから、完全に治して長生きできる治療を試したい(腫瘍内科の先生からはこんな考えはおこられるかもしれません)。ということで、今回は根治を目指すための集学的治療に関する論文が2編もでているので、それを読んでみました。

1編目はイタリアのグループからの論文です。

 

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Efficacy of FOLFOXIRI plus bevacizumab in liver-limited metastatic colorectal cancer: A pooled analysis of clinical studies by Gruppo Oncologico del Nord Ovest

Eur J Cancer. 2016 Dec 13. pii: S0959-8049(16)32534-5.

 

Introduction

  • 切除不能大腸癌に対する1次化学療法には、テクニカルに切除可能となるよう腫瘍縮小させる、微小転移病変を根絶させる、再発のリスクを下げて長期予後を改善させるなどの目的がある。
  • イタリアGONOグループは、3剤併用のFOLFOXIRIレジメンがConversion率を増加させ、長期予後をもたらすことを報告してきた。
  • さらに近年、FOLFOXIRI+Bmab療法が、FOLFIRI+Bmabと比較して奏効率、PFS、OSを有意に改善することを報告した。
  • 肝限局転移を有する切除不能大腸癌に対し、FOLFOXIRI+BmabとFOLFOX+Bmabをランダム化比較したPhase II OLIVIA 試験では、FOLFOXIRI+Bmab群でR0切除率が有意に高かった。
  • 今回の統合解析では、GONOグループで行った3試験(TRIBE試験、FOIB試験、MOMA試験)のうち、肝限局転移を有する切除不能大腸癌に対するFOLFOXIRI+Bmabの臨床成績を解析することを目的とした。

Methods

  • 切除不能大腸癌に対しFOLFOXIRI+Bmabを行った、FOIB試験(57例)、TRIBE試験(252例)、MOMA試験(232例)の中から、登録時に肝限局転移であった症例のみを選択した。
  • 転移状況の評価は多職種チーム(Multidisciprinaly team)で行われた。
  • FOLFOXIRI+Bmabの予定投与クール数はFOIB試験とTRIBE試験で12コース、MOMA試験で8コースであった。
  • 肝切除前はBmab投与を最低5週間控え、肝切除後には術後補助療法として、FOLFOXIRI+Bmabを合計12クールとなるまで投与した。

Results

  • 541例中205例(38%)が肝限局転移症例であった。
  • 患者背景としては同時性転移(90%)、4つ以上の肝転移数(61%)、両葉転移(79%)、転移巣サイズ5cmより大きい(42%)、7区域以上にまたがる転移巣(25%)、原発巣切除済み(64%)、RAS変異型(58%)、BRAF変異型(12%)であった。128例(62%)は残肝の脈管を巻き込んでいるため、切除不能と判断された。46例(22%)はOncologicalな理由で切除不適と判断された。残りは詳細不明であった。
  • 奏効率69%、病勢コントロール率 93%、8週以内の早期奏効率42%、R0切除率30.7%、R1切除率5.4%、R2切除率8.3%であった。15例はRFA併用であった。
  • 切除可能となる予測因子は、多変量解析において6区域未満にまたがる転移巣、RECIST判定で奏効が得られた症例が同定された。
  • R0/R1切除症例はその他の症例と比較して有意にPFSの延長が認められた(18.1 vs.10.7M, HR: 0.48 [95%CI 0.35-0.66], P<0.001)。(このPFSは肝切除時に打ち切りにせず、肝切除後の再発をイベントに含んでいると考える)。R0症例とR1症例ではPFSに有意差を認めなかった。R0症例の5年無増悪生存率は12%であった。多変量解析ではR0/R1切除はPFSの延長に有意に関連していた(HR: 0.60 [95% CI: 0.41-0.89], p = 0.012)(Tableと本文で値が異っている。もしかしたら本文はR0/1/2切除のことを言っているのかもしれない)。
  • OSに関しても、R0/R1切除症例はその他の症例と比較して有意にOSの延長が認められた(44.3 vs 24.4M, HR: 0.32 [95% CI: 0.22e0.48], p < 0.001)。R0症例とR1症例ではOSに有意差を認めなかった。R0症例の5年生存率は43%であった。多変量解析ではR0/R1切除はOSの延長に有意に関連していた(HR: 0.32 [95% CI: 0.19-0.54], p < 0.001)(Tableと本文で値が異っている。もしかしたら本文はR0/1/2切除のことを言っているのかもしれない)。
  • 切除標本組織診断の中央判定が可能であった54症例について解析を行った。9%の症例でpCRが認められた。TRG(tumor regression grade) grade1/2、3はそれぞれ41%、37%の症例に認められた。肝切除を施行した症例でTRG grade5(効果なし)は認めなかった。類洞拡張は69%(重症9%)、脂肪肝は44%に認められた。組織学的治療効果が良好な症例は予後も良好な傾向があった(Figure 2)。
  • R0/R1切除を施行した74人中の53例が再発し、30例が死亡した。無再発生存期間中央値は11.4か月で肝切除後の全生存期間は49.7か月であった。患者背景でそれらと関連する因子は肝切前のNordlinger及びFongスコアも含めて存在しなかった。
  • RAS変異並びにBRAF変異の有無は肝切後の無再発生存期間、全生存期間に関連しなかった。

Discussion

  • 化学療法後の肝切除率の解析には、対象症例の切除不能の定義に個人間変動があることがよく知られている(後で肝切除のエキスパートがみると、切除可能であることが多い)。しかし、本研究に含まれる3試験はPotentially resected liver metastasisを対象とした試験ではなく、最初から切除不能大腸癌症例が対象となっており、この点で信頼がおける。
  • 肝限局転移を有する切除不能大腸癌を対象としたPhaseII OLIVIA試験でもFOLFOXIRI+Bmab群で肝切除率61%、R0切除率49%と良好な成績が得られている。他の抗EGFR抗体薬+2剤併用化学療法のphaseIII試験の成績と比較して、FOLFOXIRI+Bmabのほうが良好な結果が得られているように思われる(本研究には予後不良因子であるRAS変異症例やBRAF変異症例が含まれているにもかかわらず)。
  • BRAF変異症例において、肝切除後のRFS、OSがその他の症例と比較して変わりなかった。これはFOLFOXIRI+Bmabが微小転移を強く抑えることで、BRAF変異型大腸がんのような予後不良な腫瘍の影響を相殺していると考えられる。
  • FOLFOXIRI+Bmabは肝限局転移を伴う切除不能大腸癌症例において、高い奏効率と肝切除率が得られ、予後良好な成績を示した。

 

なんか読みにくかったのは忘年会疲れでしょうか。。ちょっと気力を大量に失いました。私が知りたかったことはFOLFOXIRI+Bmabで5年無増悪生存率が12%であるということです。まー肝限局転移の人の1/10は根治が目指せるということですね。再々切除した症例もあるでしょうからもう少し増える可能性もありますけど、なんかまだまだ道のりは遠いです。大掃除しよ。

腹部手術の閉腹創における予防的Negative pressure dressing

大腸癌術後合併症

毎年この季節になると時間が経つのは早いなーと思います。クリスマスまでの街が浮ついた感じが自分は好きなのですが、それが終わると一気に日本的な感じで、年末の当直も相まってあまり好きになれないのです。今回は忘年会が忙しいので、少し簡単な論文を読んでみました。

 

Prophylactic Negative Pressure Dressing Use in Closed Laparotomy Wounds Following Abdominal Operations

Ann Surg. 2016 Dec 6.

 

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Introduction

  • 手術部位感染は患者や医療者側にとっても負担のかかるものであり、現在でも懸念すべき合併症である。
  • Negative pressure dressing(NPD)はSSIの発生率を有意に低下させ、Metaanalysisでもその効果が示されている。
  • 原理としては、NPDによる低酸素状態が局所および全身の炎症性サイトカイン上昇を引き起こし、血管新生や細胞外基質の沈着を刺激し、肉芽形成を引き起こす。
  • 腹部手術のSSI発生率は10-35%と報告されている。
  • NPDが腹部手術のSSI発生を低下させると仮定し、本研究を行った。

Methods

  • Open-label(非盲検)のrandomized試験を施行した。
  • 予定手術と緊急手術で開腹手術予定の患者を対象とした。
  • 除外基準
  1. class IVの汚染創 (http://www.woundcarecenters.org/article/wound-types/surgical-wounds)
  2. BMI40以上
  3. ASA garade4以上
  • 抗生剤投与や清潔手技などは通常通り。
  • NPD群とコントロール群(通常ケア群)に1:1で割り付けし、NPD群はPICO dressingというデバイスを用いた(PICO* 創傷治療システム | Smith & Nephew - Japan)。
  • DressingはSSIがなければ4日で除去し、SSIはガイドラインに従って診断された。
  • Primary outcomeは術後30日でのSSI発生率。
  • SSI発生率をコントロール群で35%と見積もり、NPDが発生率を10%減少すると仮定して、必要症例数は各群25例とした。

Results

  • 患者背景に差は認めなかった。
  • 30日後のSSI発生率はNPD群で8.3%(2/24)、コントロール群で32.0%(8/25)であった(片側P=0.043、両側P=0.074)
  • 術後平均在院日数はNPD群で6.1日、コントロール群で14.7日(P=0.019)で、有意にNPD群が短かった。
  • SSI発生の予測因子としてはDressingの違いのみが単変量解析で同定された。

Discussion

  • 予防的なNPD療法は開腹手術創のSSI発生を抑制し、在院期間も他院宿できた。
  • PICOは浸出液を200mlまで吸引できる。
  • すべてのタイプの創で効果があるのかはわからないが、汚染創でより効果がありそうだ。

Comment

25例づつのRCTです。単施設で可能なRCTであり、期間もそこまでかかっていないと思われます。このような研究のアイデアはほかにもありそうに思えます。腹腔鏡手術全盛の日本だとSSI発生率はもっと少ないと思います。

KRAS変異大腸癌に対する養子免疫療法

切除不能大腸癌

T-Cell Transfer Therapy Targeting Mutant KRAS in Cancer
EricN Engl J Med 2016 375:2255-2261

 

先週のNEJMにまた新たな免疫療法の成績が報告されました。これは現在話題になっている抗体療法ではなく、TIL(tumor infiltrating lymphocytes:腫瘍浸潤性リンパ球)療法というものです。TIL療法とは、がん周囲に集積しているリンパ球などの免疫細胞を採取し、それをIL-2など共に培養して体内に戻す方法らしいです。すでに癌を認識している免疫細胞を使用するため、効果が得られやすいという考え方です。今回の論文ではKRAS mutant G12Dを持つ切除不能大腸癌症例に対して、 特異的な自家腫瘍由来 T 細胞を移入し、奏効を示した症例の症例報告みたいです。

 

 抗腫瘍リンパ球の養子細胞移入の詳しい手順については読んでも全くわかりませんでした。ほかの教科書を見ての想像ですが、

  • 腫瘍切除し、腫瘍内浸潤リンパ球を体外ex VIVOで調製して殖やす。
  • これら不均質なTILs集団 をTマイク口タイターウェルでのサブク口ーニングによって分離する。
  • サ ブク口二ングした集団の中から、KRASG12D変異ペプチドに曝露した後にインターフエロンを豊富に産生するものを同定する。
  • 適切な増殖因子の存在下で培養し、試験管内で十分に増やす。 

の手順ではないかと思います。

結果

  • 投与40日後の検査では7つの肺転移全てが縮小していた。
  • 9か月後には6つの病変が縮小を維持していた。
  • IL-2投与の影響から回復後は有害事象は認められなかった(IL-2を同時に投与するようである)。投与後2週間で退院した。
  • 9か月後に増大傾向の1病変と、その近傍にある縮小した病変1病変を切除したところ、縮小病変にはvariableな癌細胞は認めなかった。
  • 9 ヵ月後に増大していた病変には、この T 細胞が認識する主要組織適合遺伝子複合体クラス I の発現がみられなかった。

 

たった1例の症例報告ですが、治療が奏功しているためかNEJMに掲載されています。大腸癌のPD-1抗体もたった1例の奏効例からMMR欠損症例に絞られたのを思い出しました。やはり1例1例が大事だなと思わせる報告でした。免疫療法の勉強もっとしないといけません。